松浦弥太郎エッセイ04

今日の朝食。

文・写真:松浦弥太郎
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旅に出かけると、いつも、ふとこんなことを考える。

旅と旅行の違いってなんだろうかと。

一人でするのが旅と答える自分がいる。たとえば、誰かと一緒であっても、個として限りなく自由であれば旅といえるだろう。少し哲学的だけど、旅とは人生であり、人生とは旅である。そんなことを僕は旅先の朝、ぼんやり思い耽っている。

旅先の朝食が好きだ。さあ、今日はどこに行こうか。どんな一日を過ごそうか。誰と会おうか。朝の気分はそんなふうに何もかも自由だから。

朝、泊まっているホテルのレストランに行き、朝の光がきれいなテーブルを選んでそこに座る。コーヒーを飲みながら、好きな本を開く。朝のやわらかい光で読む文章は、いつも新しい気づきや発見をもたらしてくれる。コーヒーの湯気を眺めながらぼんやりしたり、窓の外の景色に目をやったりしながら、とびきりリラックスしたぜいたくな時間だ。

自分と同じように一人で朝食をとっている人を見るのも好きだ。この人はどこから来たんだろう。この人は今日どこに行くのだろう。どんな旅をしているのだろうかと想像を膨らませながら。

僕は、トーストした食パンにクリームチーズとブルーベリージャムをのせて、まるでバースディケーキを目の前にした子どものように、おいしそう!と心の中でつぶやいて、この、ささやかな朝食が、今日の僕を元気にしてくれるんだ、今日一日を支えてくれるんだと思いながら、手を合わせる気持ちで食べる。

同じように、たくさんの人が、今日をなんとか乗り越えていこうと思いながら、自分自身をはげますように朝食を食べていると想像しながら。

きっと今みんな朝食を食べている。今日をがんばって始めようとしている。

そしてこうも思う。僕らは一人だからこそ、決して一人きりではないんだと。

2019年10月6日

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