わたしたちのきほん

きほんのはなし1

写真:松浦弥太郎
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「YAECA」井出恭子(以下、井出) 「くらしのきほん」松浦弥太郎(以下、松浦)

松浦:自分のなかの“くらしのきほん”を、深く掘り下げていくようなお話を、のんびりと話していくのって、なんだか楽しそうだなあ、と思ったんです。今回はファッションブランド「YAECA」のデザイナーである井出さんと、答えのないおしゃべりをしていきます。ではでは、さっそくうかがいたいのですが、えーと、色は、何色がお好きですか。好きでも、そうじゃなくても「色」っていったときに、まず、どんなことを考えますか。

井出:好きな色ですと、白と青が好きです。白と青のバイカラー。別々で。対比がというよりは、グラデーションが好きです。青から白になっていくグラデーションが好き。自分が着る服のほとんどは、白から藍の間か、白から黒までの間ですね。そのなかに、グレーが入ってくる。自分の好きなものについては、ほとんどそのあたりの色が入っていますね。

きほんに興味津々の二人です

松浦:それは、子どものころからですか。

井出:いえ、子どものころは、意識していなかったんですけれど、言われてみると、そうじゃない色を着ていた記憶があんまりないんです。だから、もしかしたら、そうだったのかも。

松浦:僕は、子どものころ、色を意識したことって……。空の色。青が好きだなって思っていて。でも、それはすごく漠然としているんです。クレヨンとか、絵の具で絵を描くときに、最初に使う色は、不思議と緑なんです。でも、だからと言って、緑が好きかと聞かれると、嫌いじゃないけど、そうでもない。そこは感覚的なことなんですね。色を意識したのは、何かと何かが合わさったときに生まれる、また違うアピールに触れたときというか。そのときに、はじめて、色の個性を感じたんですよね。

井出:色のコーディネイトってことですよね。

松浦:そう。コーディネイト。でも、子ども時代のことですから、すごい稚拙な感覚で。あとは、野球チームの、チームカラーですね。野球チームって、チームカラーがあって、それで、チームの個性やイメージをアピールしているんですよね。それが、僕にとっては、ものすごくカルチャーショックだったんですよ。

井出:子どもの頃に、それに気づかれたんですか?

松浦:そう、気がつきました。僕は巨人が好きなんですけど、巨人は黒とオレンジなんですよ。黒とオレンジの組み合わせってなんてかっこいいんだろうなって思って。黒だけだとかっこいいと思わなかったのが、2色あることで、それぞれの個性が分かるんですよね。ちなみに、色の組み合わせでいいなと思ったのは、黒と黄色です。

井出:あー。

松浦:これは、なんか、アメリカンフットボールの、「ピッツバーグ・スティーラーズ」っていう、まあ、分からないと思うんですけど(笑)。

井出:すみません、わからないですね(笑)。

松浦:「ピッツバーグ・スティーラーズ」は、チームカラーが黒と黄色なんですよね。黒に黄色と赤と青の星があるんですけど、とにかく、そのコントラストがすごいんですよ。それにうわーーっとなって。なんて、かっこいいんだろうと。それから、車を描くにしても、服を描くにしても、何を書くにしても黒と黄色を使っていました。

きほんとはその人の心地よさ

井出:それはもう、デザインですよね。

松浦:デザインですね。だけど、黒と黄色のかっこよさを、自分の服とか持ち物にまで持ち込むかと言ったら、それは違うんですよね。

井出:たしかに、わたしもそうですね。自分が好きな色って、もっと漠然としていて、もっとたくさんあって、それは自分が身につけるかというのとは、別の感覚で。好きな色って、別にありますよね。

松浦:落ち着く色ってあるじゃないですか。たとえば、白にちかいカラー。真っ白ではない感じとか。

井出:自分が、心地いい。

松浦:そう。心地のいい色っていうのは、好きな色とは違うような気がしますね。

井出:かっこいいなって思っているものと、自分が心地いいもの。たしかに違うかもしれませんね。

松浦:とはいえ、なんですけれど、さいきん、気が付いたことがあって。やっぱり、黄色が好きというのが、なかなか抜けないんですよね。それは、自分では気が付けなかったんですよ。自分の内側にあることなんだけれど。なぜ、さいきん気が付いたのかというと、僕、インスタグラムを始めたんですよね。

井出:拝見しましたよ! びっくりしました(笑)。

松浦:投稿写真の一覧を見てみると、黄色いものばっかりなんですよ。で、それに気がついたとき、ぞーっとして(笑)。これは抜けきれてないぞ、って。僕が注目していたり、身近にあるものは黄色が多いんですよね。

井出:ほんとうですね! 玉子とかレモンとか。

松浦:ぐっとくるものは黄色なんですよね。パンとかギターとか、黄色っぽいもの。洋服は、白やブルーとか、グレーやネイビーしか持ってないんだけど、身近にあって嬉しいものは黄色なんですね。あと、旅先でも黄色いものは写真に撮りたくなる。

旅先のニューヨークにて

井出:元気が出る色というか。うれしくなる色、ですよね。

松浦:井出さんにも、そういう色ってないですか。小物でも、なんでも。普段は白とかグレー、とかだと思うんだけれど。

井出:嬉しくなる色は、自分では意識してないけど……。

松浦:金とか?

井出:ああ! ゴールドは嬉しくなりますね! なんで分かったんですか?

松浦:なんとなく思ったの(笑)。金かなあと思って。その白い服の裏側に金色があるような……。

井出:すごい! わたしが思いつく前に(笑)。たしかに、金は、嬉しくなりますね。金色の紙とか。玉子の黄身にちかいかんじですけれど、金色のものを、ちょこんと身につけるのは、好きですね。大々的に身につけることはないんですけれど、白いストールにちょっと金の糸が入っているとか。すこし金が入っているものに、元気をもらえるんです。

井出さんお気に入りのゴールドのアクセサリー「TED MUELING」

松浦:たとえば、ドアの金具やバッグの留め金で、金と銀があるじゃないですか。金具だとどちらがお好きですか。

井出:金具は銀かな。でも、普段自分が身に付けるとしたら、やっぱり金が憧れの色ですね。

松浦:金具で、金がうれしいか、銀がうれしいかって、難しいですよね(笑)。

井出:金が好きっていうのは、松浦さんの黄色が好きっていうのに近い感覚なのかもしれません。なんか、好きになるものって、形とかでも、触り心地がいいとか、持っていて、心地のよいものですよね。わたしだったら玉子の形が好き、とか。もともと本質的に好きな形はあるんですけれど、それ以外だと、ほとんど出会い方で決まるのかなと思いますね。どういう感じで、自分のものになるか。どこで、誰が持っていたのか、とか。そういうことに、かなり左右されますね。

松浦:モノそのものよりも、背景とか物語、プロセスとか、そういう方がお好きなんですね。

井出:そうかもしれません。一目惚れっていうのもあるんですけれど、出会い方を受け入れがちです。出会い方も含めて、それが自分に向いているのかどうか。モノによってですけれどね。これじゃなきゃいやだ、っていうのもあるんですけれどね。

松浦:絵を描いたりってしませんか? 色鉛筆とかで。

井出:描きますね。

松浦:絵を描くときは、いつも、何色を使いますか?

井出:紺ですね。

松浦:あっ、僕も一緒。いまは紺なんです。

井出:昔から紺ですね。

松浦:クレヨンで描いて気持ちがいい色は紺。それから、ピンク。色がはっきりしているから、白い紙に紺で線をひくと、ものすごく気持ちがいいですよね。

井出:紺とピンク、分かります!

松浦:でもね。常にチャンスをうかがっているのは黄色(笑)。どこで入れられるか、っていう。レモン色とか。なんか、すごくいいですよね。

井出:紺に黄色もいいですよね。

松浦:黄色は常に僕の隣にいる感じ。ゴールドもいいですよね。いろがみにも1枚しか入っていないし、なんか、いちばん偉い感じがする。

井出:クリスマスツリーのいちばん上の星とか。やっぱり、子どものころから、金色だけは大事にしていたのかもしれない。いろがみの金色も、特別ですよね。簡単には、あげたくないというか。

松浦:うん。あれは永久保存ですね。

井出:心地良いことに興奮している状態って、その興奮が、意外と落ち着くんです。高揚している感じが好きなんでしょうね。自分に何もストレスがないものは、退屈だと思います。

松浦:そういうものって、どこもつかんでいなくて、ふわふわと浮いていて、きもちわるいかんじがするんですよね。

井出:たとえば、旅から帰ってきたときとかも、「ああ、かえってきた」って、落ち着きますよね。その、心地いい状態に興奮しているんだと思います。でも、わたしがゴールドが好きっていうのは、今日知りました。

松浦:言ってみるものですね(笑)。

*まだまだ続きます。

井出恭子さん YAECA HOME STOREにて

井出恭子 いで・きょうこ

デザイナー。静岡県生まれ。2002年、アパレルブランド「YAECA」(ヤエカ)の設立に参加。2005年、ウィメンズ部門立ち上げとともにデザインも手掛ける。東京・恵比寿にYAECA直営店、中目黒にYAECA APARTMENT STORE、白金高輪にYAECA HOME STOREがある。着心地のよい、美しい日常着を提案する。

2015年7月16日
写真:松浦弥太郎

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1 件のコメント

弥太郎さんがこんなにもゴールド推しを露わにするって意外でした。会話をじっくり読んでいると描写に違和感を感じるほど。価値が変わらない、希少価値、金メダル。わたしも、金色は美しいと思います。

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