日々思うこと
人は皆、今日を精一杯生きています。悩み、苦しみ、悲しみながらも、あらゆるものを受け入れ、出来事を理解しようと努め、人を許し、一人でも多くの人を愛するために生きています。どんな場合、どんな時でも、まわりに対してやさしくありたい。
「やさしくあるために」。
こんな言葉をよくぼんやりと思い浮かべます。そのために自分はどうあるべきなのだろうか。社会や他人と、どう接していけばいいのだろうか。どう振る舞えばよいのでしょうか。心をどう整えればいいのでしょうかと。。。
暮らしの知恵袋
何を努力し、何を学んだらいいのだろう。改めたらよいことは何か。そんな時、ヒントを与えてくれる一冊があります。
貝原益軒の『養生訓』。貝原益軒は、江戸時代の儒者であり、84歳まで生き、死の前年まで著述をつづける健康を保っていました。『養生訓』は、著者83歳の時に書き下ろした健康論で、現在も読み継がれている名著です。
人それぞれの健康がある。それでよいと思っています。持病があっても、自分なりの健やかであるように日々心がけたい。そのためには何を学んだらよいのか。『養生訓』はそれを教えてくれている。とはいえ、『養生訓』は、家庭医学書ではありません。書かれているのは、いかに日々を生きるかという一貫した世界観で、八十年以上生きてしあわせだった人間のゆるぎない日々の知恵袋です。
「怒ったあと」 。 怒ったあとは食事をしてはいけない。食後に怒ってはいけない。心配事をしながら食べてはいけない。食べてからあと心配してはいけない。
「心を安らかに」。心はからだの主人である。この主人を静かに安らかにさせておかなねばならぬ。からだは心の下僕である。うごかしてはたらかさねばならぬ。心が安らかで静かだと、からだの主人たる天君はゆたかで、苦しみなく楽しむ……。
というように、現代人の私たちにとってもあたりまえのことを、指さし確認のごとく、この本は教えてくれています。
読めば読むほどに、自分の身体を健康に保つのは、自分の論理的な責任であるという、著者のかたい信念が、この一冊の土台になっているのがよくわかり、また、すべてに対する大きな感謝が、その信念のちからになっていることに気づかされます。
きほんの一冊
300年前の知恵の宝庫『養生訓』。今を生きる私たちはこの一冊をどのように読むべきなのか。たとえば、なによりも心の平静を保つことに心がけること、毎日毎日にたのしみを見つけて生きること。からだを動かすこと。大食をしないこと。少量の酒をたしなむこと。病気になってもいきなり薬を飲まないことなどは、今日の自分が忘れていたことかもしれません。
今日やさしくあるために、開いたページの一文を読んでみる。素直に学んでみる。誰にでもなく、ありがとうと手をあわせる。そんなきほんの一冊としておすすめします。
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巻二の「心を楽しませる」が好きです。…山水を眺め、月花を鑑賞し、草木を愛し、四季のうつりかわりを楽しみ…とあります。楽しみを失わないのが養生の基本であるとも書いています。長生きしたいなと思わせてくれます。ありがとうございます。感謝。
とても面白くて大好きになりました。題名から難しい本を想像していましたが、心を楽しませ楽しく生きることが書いてあって、そのすてきさに感動しました。為になって楽しい本です。ありがとうございました!感謝。