しばらくさぼっていたというか、まったくもって玉子を焼いていなかった。他のいろいろな料理に気を取られてなんて言ったら、ちょっと忘れないでよと玉子に言われそうだから、なんだか玉子にごめんなさいと言いたい気持ちでいっぱいだ。
ヘルシンキのホテルに三泊した最後の朝、朝食にサニーサイドアップを注文した。それまではホテルでホームメイドされた、最高においしいシナモンロールと香り高いコーヒーに首ったけになっていて、玉子料理のことなんて頭に無かった。ある朝、そのおいしさに思わず目をつむってシナモンロールを味わいながら、ふと横のテーブルを見たら、実においしそうなサニーサイドアップを食べている老婦人がいた。その時僕は、明日の朝は絶対サニーサイドアップを注文します、と思ったのだ。
そうして目の前に現れたサニーサイドアップだ。もちろんちょうど良く焼いてもらったベーコンも添えてもらった。さてとなんて言いながら黄身を崩して一口食べてみたら、そのおいしさにびっくりたまげた。ワオ。玉子もおいしいし、その焼き方もまったくもって完璧で、これですこれです、と僕はそこらじゅうの人に言いたくなった。いやあ、なんておいしいサニーサイドアップなのだろう。北欧の玉子がおいしいのか、その焼き方がうまいのか、塩気といい、風味といい、なにもかもが感動の味だった。
これは焼いてくれたシェフに一言お礼を言わなくてはならないと、しっかりと味わって食べ終えた後に、ウエイトレスの女性に「サニーサイドアップ最高でした。焼いてくれたシェフにお礼を言わせてください」と頼んだ。するとウエイトレスの女性は喜んでキッチンに案内してくれた。
シェフは若くて人柄の良い男性だった。「ほんとうにおいしかったです。これどうやって焼いたのでしょうか?」と僕は聞いた。すると、「ありがとうございます。焼いて見せましょう」と言うので、うんうんうんと僕はうなずいた。
まず温めたフライパンにたっぷりのバターを溶かす。火はごく弱火。そこになんと彼は塩をぱらぱらっと振った。「バターに塩か…」と思った。そして、ザルに取って、水っぽい部分をなくした玉子2コを(これはおいしさのコツと知ってます)、静かーに静かーにていねいにフライパンに置いて、白身が白くなるまで、ごく弱火で火をいれる。たったこれだけのことだとシェフは言った。僕はお礼を言ってテーブルに戻り「帰ったら絶対作る」と独りごちた。
溶かしたバターにひとつまみの塩。これは今まで知らなかった。ということで、早速、帰国した次の日の朝、サニーサイドアップを焼いた。トップの写真がそれ。味は、うーん、おいしいけれど、最高!ではないんです……。旅先で食べたからあんなにおいしかったのかな。また作ろう。つづく。
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目玉焼きがキレイに出来るとしあわせなきもちになります。バターに塩!今日は平日のおやすみなので、今からチャレンジします。しあわせになろ!
サニーサイドアップ。さっそく作りました。
バターに塩をぱらぱら。弱火でじっくりと焼いて…完成。
おいしくできました!
玉子の黄身が色あざやかなままなのもいいですね。
ありがとうございます。
ザルで水分を取り、余熱で。のきほんレシピで作っていて本当に美味しいです。さらに、美味しい玉子があるのですね。大発見にワクワク!が伝わってきます。玉子が「王子」に見えます。さらには玉子の「王様」もいるのかも知れません。ワクワクしますね♪感謝。