子どもの頃のこんな思い出がある。近所の豆腐屋の軒先に、ひと抱えもある大きな釜があった。ある日、そこからもうもうたる湯気が上がっていた。それを見た僕はびっくりして、あわてて家に帰って、その事態を母に告げた。それを聞いた母は大笑いをし、「火事じゃないから大丈夫。それはお豆腐のおからで、卯の花とも言うのよ。お豆腐よりも栄養があるの」と教えてくれた。僕は湯気を煙を見間違えたのだった。母はその日の夕飯のおかずにおから煮を作ってくれた。
おから煮を食べるたびに、そんな記憶が蘇る。僕は甘さを含んだおからの芳香が大好きだった。おから煮は懐かしく、しみじみおいしいおそうざい。その家ならではのおいしい味つけがあるのもおから煮の妙。
あさりのむき身と干し貝柱がおいしさの秘訣。最後に加える酢が隠し味。ぜひ、この通りにお作りください。
材料(4人分)
おから…250g
あさりのむき身…130g
干し貝柱…10g
にんじん…1本
ごぼう…1本
サラダ油…大サジ2杯
ねぎ…2/3本
だし汁…800cc
酒…60cc
砂糖…60g
しょう油…60cc
酢…大サジ1杯
作り方
1 干し貝柱を50ccの水で一晩戻しておきます。にんじんとごぼうは、長さ2センチほどの細かいせん切りにします。せん切りしたごぼうは10分ほど水につけてから水気を切っておきます。ねぎは小口切りします。
2 大きめの鍋にサラダ油を入れ、中火であさりを炒めたら、一度取り出します。
3 鍋におからを入れ、炒るように混ぜたら、にんじん、ごぼう、干し貝柱と戻し汁を、加えて、さっと炒めます。
4 酒、だし汁、砂糖、しょう油を加え、中火で煮立て、あさりを加えたら弱火で50分ほど、じっくり煮込みます。
5 水分が無くなってきたら、ねぎを加え、焦がさぬようにヘラを使って全体をよく混ぜ合わせます。
6 さらに全体の水分を飛ばすように炒めたら、酢を加えて、さっと混ぜたら出来上がりです。
*こちらは過去の記事を再更新したものです。
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感動しました!おから煮はこんなに美味しいものなのですね。これは大好物になります。食感を感じているとじゅわ―っとあとからあとから旨味が増してきます。ゆっくりいつまでもその風味に包まれます。しあわせあふれるレシピを、本当にありがとうございます!
湯気を煙だと思ったエピソードが面白いですね。あさりと貝柱を入れたものは初めてなので、作るのがとても楽しみです!