喜んでもらいたい
手紙を書く。そもそもなぜ人は手紙を書くのでしょう。手紙を書く目的はひとつです。相手を嬉しくさせて、たっぷりと喜んでもらうことです。そのために、自分の精一杯の想いを伝えたい。それは「ありがとう」という感謝の気持ちです。
手紙は、その言葉遣いや、文章や文字の雰囲気から、書いた人の感情が自然と伝わるものです。ですから、手紙を書くときには思いやりという心持ちと、ささやかな作法が必要です。一人よがりにならず、相手にとっての 丁度良いをおもんぱかる。そのための六つの思いやりについて一緒に考えていきましょう。
六つの思いやり
嬉しくないことは書かない
手紙というのは、読んでくれる人を、喜ばせたいから書くものです。しいて言えば、どんなボールを投げるのかということです。取りやすいように投げれば喜ばれるでしょうし、強く投げれば受け取らずによけてしまうでしょう。
果たして相手が喜んでくれるのだろうか。手紙を書くときは、相手が文章を読んでどんな気持ちになるのかをよく考えましょう。もしも相手にとって、嬉しくないことを書かなくてはいけないのなら、その時は直接会って話をするのが正しい方法です。
返事が書きやすいように
手紙とはコミュニケーションです。相手にとって、返事が書きやすいような文章を書くことが大切です。初めてお便りする場合は、礼儀として定形文をふまえることが大切ですが、親しい友人などには、季節のご挨拶など、形式張った文章にこだわる必要はありません。相手への敬意を持って書けば、素直な言葉でその想いは確かに相手に伝わるものです。素直に書いた手紙は、素直に返事が書きやすいものなのです。
ゆっくり書く
文字は、ゆっくりていねいに書きましょう。ゆっくり書いた文字と、急いで書いた文字には違いが表れます。漢字は省略せず正確に書きましょう。書き慣れた文字は、トメやハネなど、曖昧な書き方をしてしまいがちですが、正確に書くだけで、その心遣いが表れ、目に嬉しい文字として見えるものです。
たくさん書かない
便箋の枚数も思いやりのひとつです。受け取る人にとっての負担を考えて、どんなに言いたいことがあっても、せいぜい二枚くらいにおさまるように簡潔に書きましょう。便箋にぎっしり書かず、余白を残すのも、読みやすさを考えた作法です。そのために、言いたいことはなるべくひとつにすることが大切です。
封の閉じ方
手紙は、書き終わったらおしまいではありません。受け取る相手が、封を開けるとき、誤って中身も切ってしまわないように、封筒だけがすっと切れるように、便箋を封筒の底にきちんと収めます。また、封を閉じる時、糊はベタベタと塗らないようにしましょう。糊をうすく塗るのも開けやすさの相手への心遣いです。
返事はすぐに書く
返事は早ければ早いほど相手に喜ばれます。返事をしっかり考えて書こうとすると、考えるだけで時間がかかってしまい、返事が遅くなりがちです。まずは手紙が届いた日に、受け取ったことをお知らせするお礼の手紙を書くことです。返事はそれからゆっくり書けばよいのです。
手紙は宝もの
手紙というのは、書いた人の分身です。そして、人を喜ばせる魔法のちからを持っています。いろいろな方法で伝えられないことが、たった一通の手紙で伝えられることもあります。大切なのは愛情です。そういう意味では、手紙はすべてラブレターなのかもしれません。
ときおり、手紙を書いてみてはいかがでしょうか。きっと返事をいただけると思います。そういうやりとりを繰り返せば、どういう手紙を貰ったらうれしくて、どういう手紙がうれしくないのか、自然と想像力が働くようになるでしょう。その経験は積み重ねになり、いつしか自分らしい手紙の書き方を教えてくれるものです。
コメントを書く
この文章が本当に大好きです。何度も読み返しています。手紙を書くマナーにとどまらず、日々の人との接し方そのものが書かれていると思うからです。
お手紙を書いて、面と向かっては、うまく伝えられない気持ちを素直に表現します。その繰り返しの中で、直接ちゃんと伝えられる日が来ることを夢見ています。でも、お手紙で、想いはちゃんと伝えられると思います。
万年筆を使える年代になり、メール交換から文通へと 思いを交わす方法を変えてみました。
便箋を選んだり、切手を選んだり
相手を思いながらの時間は
とても貴重な一人時間になりました。