夜のよみもの。朝になったら消えます。

泣きたくなった
あなたへ 9

文・写真:松浦弥太郎 
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あなたへ。

いつもお便りありがとうございます。

一通一通読みながら、

補足の説明を返事しようと思いましたが、

やっぱりなかなか言葉に出来なくて、

でも、あの日、伝えたかったことを、

今夜、お話します。

そう、

なにもできなくても、

なにも持っていなくても、

なにも知らなくても、

いつも笑顔でいること。

にこやかでおだやかでいること。

それは、

がんばるとか、そういうことではなく、

あきらめるとか、開き直るとかでもなく、

投げ出すとか、逃げるとかでもなく、

自分がどんな負い目を背負っていようとも、

そう、コンプレックスでどうかなりそうでも、

ふっと息を抜いて、

いつも笑顔でいること。

にこやかでおだやかでいること。

戦ったり、構えたりするのではなく、

まず、僕はそこから自分の一歩を、

はじめようと思ったのです。

いや、一歩進めなくても、そうやって立つだけでもいい。

いわば、スタート地点です。

誰に教わったわけでもなく、

自分を守るために、

本能的にそうしようと思いました。

でも、今思うと、

きっとそれまで、何かあるたびに、

見たり、触れてきた、両親のそういう姿が、

教えてくれたのかもしれません。

(うちは裕福ではなかったのですが、いつも両親の笑顔があったので、大変さや、お金が無くても、なぜか安心感だけはありました。)

とにかく、そうして、ずっと生きてきました。

つらかったり、苦しかったり、

それこそ泣きたくなったり、

もうだめだと思ったり、

そんなことはしょっちゅうだけど、

そんなふうに何かあるたびに、

ふっとちからを抜いて、

何度も立ち返る場所というか部屋のよう。

それが、

いつも笑顔でいること。

にこやかでおだやかでいること。

いちばん大切なこと、手離したくないこと、いわばお守りのようなもの。

眉間にしわが一本入ったら、二本に増やすのではなく、

無理にでもしわを伸ばす。

深呼吸して、気持ちを整えて、

別に乗り越えられなくていい。

そのときだけは勇気を出して歩みを止める。

いつも笑顔でいること。

にこやかでおだやかでいること。

それが僕の底力。精いっぱいなんだ。

「そんなふうに見られないように」と、

必死になっても、いつか必ずつらくなる。

そんなに続かないんです。無理だもの。

そうしたら、

いつも笑顔でいること。

にこやかでおだやかでいること。

こんなふうに振り出しに戻る。

自分らしさって、振り出しという、スタート地点ではないかな。

戻る場所があることで、僕はずいぶん命拾いしました。

これからもそうだろうな。

いつもほんとうにありがとうございます。

言葉足らずですね。

こんなふうにおしゃべりしながら、

少しずつ伝わると嬉しいです。

歩きながら話したい。

[追記]

いただいたお便りは、そのほとんどを、届いたらすぐに読んでいます。みなさんの心と言葉をしっかり受け取っています。ほんとうにありがとうございます。(松浦弥太郎)

2015年11月27日
文・写真:松浦弥太郎 

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7 件のコメント

【いつも笑顔で】
簡単なようで難しい。でも誰にでもできることですね。
自分のためにも、周りのためにもいつも心がけていたいです。

朝、時々すれ違う人がいて、その方はいつも笑顔なのです。
一昨日も、写真ですが、とっても素敵な笑顔を見て、本当に幸せな気持ちになり、その人の幸せを心から願ったのでした。
笑顔。
いつもありがとうございます。

いつも笑顔でいること。
にこやかでおだやかでいること。
いま、このタイミングでこのお話しに出会えたコトに感謝します。
ありがとうございます。
小さなカードに書いて
携帯ケースのポケットにしまいました。
心に染みます。

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