「ジョエル・ロブション」のプチカヌレ

くいしんぼう1

文・写真:松浦弥太郎 
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フランスのボルドー女子修道院で作られた伝統焼き菓子のカヌレが大好物だ。もう随分前になるが、パリのヴァンブー蚤の市で、アンティークのカヌレ型をいくつか見つけた時は小躍りして喜んだ。

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昔から僕はミニチュアと呼ばれるものに目がなく、本来大きなものが、手の平サイズに縮小されていて、しかもしっかりと用と成すとなると、思わず両手で抱きしめたくなる。カヌレというお菓子は、昔の僧侶の帽子を型にした、溝のある昔ながらのケーキ(クグロフ)が、そのまま小さくなっているだけでもたまらないのだが、そのおいしさが、小さくなってさらに増しているという、夢のようなお菓子なのだ。

「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」のプチカヌレ(237円)は、通常のカヌレ(345円)でも充分なのに、もうひとまわり、さらに小さくするなんて、僕のような小さいもの好きからすると、パン、パン、と胸を二三発撃ちぬかれるような衝撃的な嬉しさがある。まわりの皮が香ばしくてカリカリ、中身がふっくらモチモチ。ラム酒と卵黄、バニラによる豊潤な甘さが実においしい。半分に切った断面の美しさといったら、しばらく眺めてうっとりしたいくらいだ。

「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」のプチカヌレを手土産に買う時、店員さんに「プティカヌレを6コください(6コがきれいに箱に収まるのもたまらない)」と言うのは、「オーボンヴュータン」の河田勝彦さんが「プチ」を「プティ」と堂々と発音していたことの真似である。店員さんが「かしこまりました」と、いつも以上に感じ良く応対してくれるのは気のせいだろうか。今日もくいしんぼう。

*「ラ ブティック ドゥ ジョエル・ロブション」はこちら

2015年10月27日
文・写真:松浦弥太郎 

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4 件のコメント

この記事がとても好きです。何度も読みました。小躍り。夢のよう。衝撃的なうれしさ。うっとり。プティ。躍動感があり、ワクワクに満ちあふれていてすてきです。しあわせが伝わってきて、しあわせになれます。ありがとうございます。感謝。

シャンソンをBGMに…
お気に入りの写真集と…
エスプレッソと…

…幸せ…

お焦げのところもいいんですよ?
カロリーが高いし、プックリの自分のお腹といつも格闘しますが…買っちゃうんですよ、意志に負けてね

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